人は火によって進化した。
毛皮を脱ぎ捨て、病を減らし、豊かさを構築した。
火とは、なんだろうか。
近未来のファンタジーというものがあるよな。いわゆるサイエンスフィクション、SFだ。
そこはAIにサポートされたり現実では考えられない魔法のような道具を便利に扱ったり。その中で著しく減るのが火の存在ではないだろうか。
火力発電で大きな炎は使われている可能性はある。だがそこに人間は存在するだろうか?管理はAI任せになっていることだろう。
そもそもの電力効率だって変わっていて、人が歩く程度のエネルギーで生活を賄っているかもしれない。
私生活で炎が成せることは大概が熱に置き換えても済んでしまう。
そしてその出元はほとんどが電気になるだろう。今だってIHに置き換えられていることがそれだ。
今の時代を見ていると、災害がある限りオール電化はお勧めされないし、場所によってはLPガスの必要性も出てくるから火が日常から消え去ることはない。登山やBBQなどの娯楽からも切り離せないものだ。
しかし外に出ることが娯楽ではなくなり、災害も回避できる住環境になればどうだろう。
きっとテクスチャや映像の形で存在は残るだろうが、炎が熱いものだという知識ごと失われてしまうだろう。
宇宙の何処かで暮らしていたら、酸素という資源を温存するためにも火から離れるしかないかもしれない。
そうなると地球に存在するからこその恵みと言える。
こうして考えてみると、剣と魔法のファンタジーのほうが今あるエネルギーを活用していると言えるほどだ。
可能不可能で言えば魔法の方がファンタジーだが、今の生活からかけ離れているという点では未来のほうがよほどファンタジーじみている。
一般的な生活には必要がなくなり、地球人の火離れ、などと言われる未来は確かに存在するのだ。
もしそんな未来が来たら、炎魔法の存在はどうなるのだろうか。物理魔法と同じ扱いになるのだろうか?業火で焼かれる描写は熱で溶ける描写になったりするんだろうか?うっかり服を焦がしてしまう、みたいなことすらなくなったりするんだろうか。
それを言い出すと氷だってわざわざ作っていなくて、存在しなくなっている可能性すらある。
そこに関しては氷菓は無くならないだろうから、その差で知識は生き延びていそうだが。
嗜好品のことを甘く見てはならないな。氷菓だけに。
俺たちにとってはファンタジーは異世界だし、過去に転移する物語はあれどあくまで地続きだ。だが未来では俺たちの時代こそが異世界であると表されるかもしれない。
過ぎた科学は魔法と同じだが、失われた化学もまた魔法なのである。