持ち物:虚無

荷物が少ない人というのに憧れる。

セカンドバッグだけ持って出かけたりウエストポーチで出かけたり、と言うとそれは老年になったと言われそうだな?
そうじゃなくて、外出に保険をかけすぎって話だ。

普段なんとなく鞄を提げて出かけているが、どのくらい不要なものなのか試してみようと思い立ったわけだ。ポケットだけでなんとかなる人生でありたい。

事前に事務所に入るために必要なものだけ纏めて、置いていくものは置いておき、スマホと鍵だけ持って出発した。

マスク忘れた。

出かけて2分で敗北確定である。

とはいえ替えは事務所にあるので踵は返さずそのまま過ごしてみたが、活動に支障ないといえばそうだが精神的には追いつかないな。

普段も散歩の時は何も持ってないというのに、用事があるとなると不安が纏わりついてくる。

鍵やら必要なものを落としてないか何度も何度も確かめる。

事務所から出る時は本当にこれでいいのか己に問いかける。

これまでだって鞄を持ってきた上でその場に置いて動くことはあった、それと同じだというのに全く落ち着かない。

「いつもある」が無いだけ。「ただ持ってる」が取り出せないだけ。「かもしれない」を置いてきただけ。支障はないのに。普段通り動けてるはずなのに。

あぁ、俺は安心を鞄に入れていたんだなぁ。

これを知れてよかったが、まだまだ身軽な人間にはなれそうもない。