夢の話をしよう

俺はその日、学校にいた。
一見病院にも思える内装と広さのそこで、今にも下校しようとしていたところだった。
何人もの生徒とすれ違いながら、なんだか気分的に正面玄関から出たいなって思って近くの階段を降りてぐるりとまわる。
大きなガラス扉。鉄のそれとは違って外がよく見える。
空を覆った雲で薄暗い。
けれど雨は降りそうにない。
ちょっと怖かったけど、出なきゃ帰れないし。さあ行こう!って時に声が聞こえた。
「そこから出ちゃいけない」
確かに何か起こりそうな不吉さを感じていた。
声はさらに言う。
「君は誘導されてそこに来ただけだ。そこから出ると戻れなくなる。君は狙われている」
そんな馬鹿なと思う自分と、その通りな予感がする自分がいた。
ここから出たらダメな感じ。
声はなんだか嫌な雰囲気じゃなかったので信じることにした。
「引き返して右に曲がって、階段をあがってから最初の場所に戻るんだ」
指示に従って校舎をすすめば、何か嫌な気配がついてきている気がしなくもない。
通りすがった人に手伝ってもらいながら人の居るところまで戻れば、そこには友人と、友人の知り合いの牧師さんがいた。
声は牧師さんのものだったらしい。
あのまま外に出たら異世界へいってしまっていたところだ、と聞いた。
近しい人と一緒なら巻き込んでまでは連れて行かないだろうと、皆で校舎を出ることになる。
移動中に見た小学生の1人が“何か”の1つで、ついてきていたりもしていたそうだ。
「大丈夫だから」
そう言われても襲ってくる不安や恐怖。
正面玄関自体がおかしいわけじゃない。外は相変わらず曇ったままで、場所を変えても恐ろしいと思うには十分だった。
牧師さんの手を握る。
ここから先に何があるかもわからない。だからこわい。
友人たちに気付かれないように大人にすがって踏み出せば、案外外は普通で。
談笑する友人たちの後ろをついて歩く。まだ手は離せない。
「走れ」
牧師は言う。
いや、叫ぶといった方が正しかったかもしれない。
全員が走りだすと、対向から来る車が気になった。

あれ、ここって右側通行だったっけ?

学校からの帰り道はため池の横を歩くので被害の出る家なんてもんもない。
嫌な予感は現実になった。
目の前でスリップを始めた車は、自分の後ろに滑り込んだ。
自分が巻き込んでるのが本当に危険なことだと、やっと気付いた。
手を離して押し出す。
流れていく車を横目で見つつ自分だけがスピードを緩める。
皆と50mほど離れただろうか。もう追いつけそうもない。
背後には3台以上の車が潰れた姿でいた。
友人たちを眺めていると、背中に衝撃が走った。
振り明けってみれば、5人の女性がボールを投げてくる。
「ああ、頭に当たればやばいかもな」
なんて思いながらそいつらから逃げようと正面に向きなおしたら、目の前に黄色い車が現れた。
「あー。なんだっけ、工事現場でよく見た顔だ」
これは後ろの人らも巻き込むなー、とか。
友人たちはずっと遠くまで行ったし安心だなー、とか。
ここまでしてもらったのにごめんなさい、とか。
色々浮かんだ。

新聞にはスリップ事故のことが小さく載っていた。
地面の凍結か?とか、大きなカーブで予見はされなかったのか、とか。
その中にちょろっとだけ、巻き込まれた人が死んだってことが書かれてた。

呼ばれて逃げれず、どうしてかもわからず。
誤魔化されるように自然に、俺は死んだ。

 

……死んだ!!?

起きてからぼんやり覚えてたのが校内のシーンだけだったからホラーで怖いって印象だったのに、書きつつ徐々に思い出して死んだことに気付いたわ!
おォい!!!